下妻物語

 
temaが最も信頼する書評家、大矢博子様が隠し日記で絶賛していた映画。なまものファンとしては、観なくてはなるまい。
http://www.namamono.com/index.shtm
 

以後、ネタバレ注意!

 
正直、はじめの内はつまらなかった。
「ラスト間際のシーン」を映した後に「始まりのシーン」へ戻るが、その際の「フィルム巻き戻し」のような映像。画面に手書きで説明を付け加えるような映像。どちらも不要なテクニックという気がした。
しかし、「ジャスコだ!」のシーンあたりから物語に引き込まれていった。確かに大矢様が絶賛するだけのことはある。そんじょそこらの映画には「負ける気がしねぇ」
 
この映画の一番の名場面は、失恋して「なあ桃子、女は人前で泣いちゃいけないんだよ」と言うイチコに対し、「うん、でも、ここには今、誰もいないよ」と桃子が応えるシーンだ。
 
しかし、このシーンを考えると、納得いかないことがある。
一人で生きてきた桃子は、多分恋をしたことが無い。当然、失恋をしたことも無い。そもそも、桃子の価値観に「恋」は存在しない。
だから桃子にとってイチコの気持ちは、理解できても実感できないはずである。
 
「優しさ」とは、傷ついてる(または今後傷つく)他人に感情移入することで発生する。
もし、何があっても傷つかない神が居たら、その神は傷ついている他人に感情移入はできない。「傷つく」という状態が分からないからだ。
故に、傷つくからこそ人は優しくなれる。この意味で、すべての優しさは弱さの裏返しである。そうtemaは考えていた。
 
しかし、この桃子の行動は優しく、桃子は失恋で傷つくことは無い。
これは矛盾だ。
 
ひょっとしたら桃子は、「気持ちは分からないが、このような場合はこうするものだ」ということを知識として持っており、その通りに行動しただけなのだろうか?
「(同情されるから)女は人前で泣いちゃいけない」そう言うイチコに応えた桃子の言葉は、「ここには今、(貴女に同情する人は)誰もいないよ」という意味なのかも知れない。
 
ひょっとしたら、この桃子の優しさこそが、「弱さの裏返し」では無い「強い優しさ」なのかも知れない。
 
とまぁ、理屈をもてあそんでみたが、上記のようなことがあるわけが無い。少なくとも、この映画の中では無い。
余計なことを考えずに、桃子とイチコの友情を感じればよいのだ。

下妻物語 スタンダード・エディション [DVD]

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