核武装のコスト

 
「日本も核武装すべきだ」という意見を読んだ。主な主張は、以下の通りである。

日本が核武装していれば、共和国*1が核ミサイルを実用化しても、報復を恐れて撃てないだろう
核武装することにより、核攻撃を受ける可能性を下げることができる
非核など理想論である。もっと現実を見よ!

主張している意味は理解したが、その判断は要素が足りない。
判断を簡単にするため、全てをコスト(金額)に置き換えて説明する。ちなみに、「全てが金額に換算可能」という思想が資本主義の本質である(大違)。
 
上記主張で出てくる要素は以下の2種類である。

被爆確率:核攻撃される確率。日本の核武装有無により変化する
被爆コスト:核攻撃された際に失うコスト(プラスの値とする)

上記主張は、以下の式となる。

被爆確率(核武装有り)<被爆確率(核武装無し)…………式(1)
ゆえに
被爆確率(核武装有り)×被爆コスト<被爆確率(核武装無し)×被爆コスト…………式(2)

式(1)が真ならば、式(2)は必ず真である。
式(1)の妥当性は問題であるが、今回そこには突っ込まない。
 
今回突っ込むのは、式(2)自体である。核武装を検討するためには、以下の式(3)を検討しなくてはならない。

 被爆確率(核武装有り)×被爆コスト
+開発コスト+維持コスト+廃棄コスト+影響コスト
被爆確率(核武装無し)×被爆コスト…………式(3)

ここで
開発コスト:核及びミサイルを開発するコスト
維持コスト:核ミサイルを配備し、維持していくためのコスト
廃棄コスト:核及びミサイルを廃棄する際のコスト
影響コスト:核武装することで、他国から受ける影響を換算したコスト

それぞれのコストに対し、特に問題になりそうな部分を以下に挙げる。
 

開発コスト

核兵器開発時には、核実験(実際に爆発させてみる)が必要である*2
どの県でやるのか?

維持コスト

配備する場所が必要である。敵国からは確実に目標とされるため、防衛を考慮する必要がある。また、テロ対策も必要である。日本では地震も怖い。
これもどの県に配備するのか?

廃棄コスト

ウランの半減期は長い。プルトニウムにしても数万年ある。しかし、起爆装置やミサイルは数十年も保たない。
いずれ廃棄しなくてはならないが、放射能漏れ等の問題が発生しうる。

影響コスト

共和国は核実験を行ったため、経済制裁の対象となっている。
それでも共和国の政体は保つかも知れない。
しかし、日本は石油や食料の輸入を止められたら保たない、政体どころの騒ぎでは無い。
 
「日本も核武装すべきだ」と主張するなら、上記コストが存在することを明示して欲しい。
上記コストを考慮した上で式(3)が成り立つなら、「日本も核武装すべきだ」という主張も理屈は通る。
それらのコストを考慮すること無しに核武装など、夢物語である。現実を直視して欲しい。
 
特に「影響コスト」は重要である。
資源に乏しい日本は、輸入を規制されれば核ミサイルを実用化する前に国が滅ぶ。
もし核武装するのであれば、食料自給率を上げ、資源消費量を下げる必要がある。
つまり、核武装を主張するならば、少子化を推進すべきである。
 
なお、temaは式(3)は成り立たないと思っているが、極論、被爆コスト=∞とすれば式(3)は成り立つ。
しかし、仮に式(3)が成り立ったとしても、temaは日本に核武装して欲しく無い。感情的に。

ジパング(1) (モーニング KC)

ジパング(1) (モーニング KC)

*1:朝鮮民主主義人民共和国

*2:実際には起爆方式による