核兵器の有効的な使い方

 
E = mc^2
美しい式である。
質量とエネルギィが置換可能という驚きもあるが、光速の二乗という巨大なスケールに圧倒される。
 
地球と月を線で結ぶ。
その線*1を辺とした正方形を宇宙に描く。
それが「光速の二乗」のイメージである。
地球を100個以上くるめる大風呂敷。
人が実感できないスケール、これが核兵器の本質である。
 
核兵器と通常兵器の主な違いは、以下の2点
 1.放射線放射能による、後まで残る影響
 2.上記に示したとおりの、桁違いな破壊力
上記の内、1は軍事的には意味が無い。後まで残る影響など無い方が、兵器としては有用である。
 
2についても、兵器の破壊力は大きいほど良いわけでは無い。ちょうど目標を破壊するだけの破壊力が望ましい。
核兵器の有効殺傷範囲は半径数km〜数十kmに及ぶ。そこまでの威力が必要な軍事施設は無い。
 
軍事基地には数平方km以上の敷地があるが、殆どが軍事的には価値が低い空き地である。目標とすべき施設は限られ、その破壊は通常兵器で充分である。
一般的な通常兵器ではシェルターの破壊は困難だが、その為に地中貫通爆弾(バンカーバスター)が有る。
兵器としての効率を考えると、核兵器の目標とすべきは都市及び住民しか無い。
 
今、日本が核兵器を持つとすれば、目標は平壌及び平壌市民となる。
しかし、平壌を消滅させたとして、共和国の政体及び軍に影響を与えられるのか
 
現代日本のように通信網が発達していれば、首都消滅は全国民が知ることになり、政体変更を要求する世論が生まれるかも知れない。しかし、戒厳令下で通信網が政体に掌握されている状態では、世論が生まれる筈がない。結果、肝心の政体に対する影響度は低いと考えられる。
 
平壌消滅が軍事的にどの程度価値ある行為なのかは、判らない。
ただ、かつて日本は東京を空襲されても戦争は止めなかった。このことから、たとえ平壌が消滅したとしても、共和国は戦争を止めないだろうと考える。
 
核兵器は、日本に対しては抑止力として非常に有効である。
しかし共和国、特に将軍様にとって、どれほどの抑止効果があるのか疑問である。
現政体存続の為なら、平壌くらい犠牲にする。そんな気がしてならない。
 
なお、核ミサイルが平壌に落ちた場合、死の灰が偏西風に乗って日本に舞い降りることになる。
平壌核攻撃は、むしろ日本に対する抑止効果があるのかも知れない。
 

首都消失 (上) (ハルキ文庫)

首都消失 (上) (ハルキ文庫)

*1:正確にはその83%の長さ