回るまわるよビールは回る

 
先週末、リレーマラソン大会に出場した。老骨に鞭打った結果、満足行くタイムで完走することができた。
その後、痛むふくらはぎをかばいながら打ち上げ会場に向かう。
 
代わる代わる走ってる最中に、昼ご飯を食べるワケにはいかない。バナナとウィダー・イン・ゼリーで20秒チャージ4時間キープしていた。
胃袋は空っぽである。
疲労も溜まっている。
汗も相当かいている。
しかし達成感は感じている。
この状態でのビールは美味い。
 
席に着き、料理を決め、ビールを注文する。
ビールが来ない。
さすがに昼間から大量のビールを注文する客は、予想してなかったのだろう。しかし、喉は既にカラカラである。
10分程待った後、待望のビールがやって来た。
 
では、カンパー…
「まだ全員のグラスが揃ってないんで、ちょっとだけ待ってください」幹事様の無情な一言である。
 
更に待つこと5分。
この5分は長かった。これまでの人生で最長の5分だったと言えよう。
ジョッキの泡が次第に低くなっていく。対面に座ってるC嬢の柳眉は次第に逆立ってくる。
temaも箸を両手に構え、皿を相手にタイトなリズムを刻んでいた。
「乾杯さえしなけりゃ、飲んでもいいんじゃないか?」そんな提案がなされ、そーだそーだその通り、と賛成しかかったその時、残りの飲み物がやって来た。
 
「あれれ?私頼んだの、オレンジジュースじゃなくてウーロン茶なんですけど」Fさんの声が聞こえた。
皆の血相が変わった。
こら店員さん、お前なんて間違いしてくれるんだと
この振り上げたビールジョッキを何してくれちゃうんだと
「…いえ、いいですこれで」Fさんは天使のような人である。
 
ジョッキをぶつけ合った後のペースが凄かった。
店中のビールを呑み尽くすような勢いでジョッキが空けられる。
食べ放題のしゃぶしゃぶも、あっという間に空き皿が重ねられていく。
後できっと後悔するに違いない、と思いながら、なぜか幾らでも腹に入る。
 
かなり酔いが回った頃、ふと気づくとC嬢がS氏に迫っている。
S氏はなかなかいい男である。ところでC嬢はS氏より年上じゃないかな? かな…いやちょっとだけ。
なぜか、話題は年齢の話になってる。
「俺ですか? 昭和××年生まれっす」
「あ、私、同い年です」C嬢がのたまう。
え?…イエ、ナンデモアリマセン。
「お・な・い・ど・し・で・す」C嬢が断言する。
まぁどちらも独身だし、S氏がお持ち帰られてもそれはそれで喜ばしい事である。
 
解散後、帰りの電車で世界が回りだした。
一旦、電車を降り、ホームで蹲り地球の自転を止めようとしていると「大丈夫ですか?」と声がかけられる。
「いやぁ、大丈夫です」と声だけは元気に応えるが、その実かなりヤバイ。
何とか自転を止め、家に帰り着く。
ジャンパーのまま畳に倒れ込み、2時間キープ。
その後、パジャマに着替えて布団に潜り込む。
 
これは暫く酒は断った方が良いと思ったりするのだが、今週末は歓迎会である。
真、人生はままならぬものである。
 

麦酒の家の冒険 (講談社文庫)

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