論理的なトンデモさん

 
自然科学系のweb掲示*1を覗くと、時折トンデモさんが現れる。そのような人と議論をするのは楽しい。
temaが良く目にするトンデモさんの特徴は、以下の通り。

a.事実では無く善悪で判断することが多い
b.自分の意見に絶大な自信を持っている
c.前提となる知識が不足している

 
トンデモさんと議論をすると、「理屈が通らない」と感じることが多い。しかし、自然科学に関する議論に於いて、「論理的で無い」ということは致命的である。それはトンデモさんも認識しているはずだ。
となれば、トンデモさんは「自分の主張は論理的である」と考えており、その主張にはトンデモさんなりの理屈がある、と考えられる。
 
簡単なのは、上記aの場合である。

a−1.A氏は善い人だから、嘘をつくはずがない
a−2.善人のA氏を責めるB氏は悪い人である。我々を騙そうとしてるに違いない

一応理屈ではある、ただし穴だらけ。特に大きな穴は「嘘では無いが事実に反する」という状況を考慮して無いことである。
 
善悪を持ち込まないトンデモさんも居る。この場合、上記bを満たすことが多い。というより、絶大な自信が無ければオーソドックスな科学理論を受け入れるため、トンデモさんたりえない。
なぜそこまで自信が持てるのか。その理由は、上記cにあると考える。
 
本来膨大にある情報から、少数の情報を抽出して前提とする。それだけを基に、単純な論理を使って結論を導き出す。これがトンデモさんの主張である。
前提が少ないからこそ、考慮すべき点を絞ることができる。論理が単純だからこそ、(その論理だけ見ると)誤りが無い。故に、自説に絶対の自信が持てるのである。
 
このようなトンデモさんは非論理的なのでは無く、大量の前提を持つ複雑な論理を扱うことが苦手なのだ。彼・彼女等の心中では充分に論理的であり、全ては明白なのである。
トンデモさんからすれば、オーソドックスな科学的判断を行う人の論理は、まだるっこしくて仕方ないはずだ。
なお、大量情報の処理に慣れておらず、多数の命題を同時に考えられないため、各命題間の矛盾に気づきにくい。それがダブル・スタンダードとなって表れる。
 
膨大にある情報から、少数の前提を抽出できるトンデモさんは、情報の抽出能力が高い。
少数の情報に集中できるため、判断も速い。
情報を取捨選択し、素早い判断を行える。トンデモさんは見方によれば有能なのである。
 
喩えるなら、トンデモさんの脳は2stレーサ・レプリカのバイクである。回転は速く加速も良いが、大荷物は運べない。
しかし、思考にはダンプカーが必要な場合だってある。
 
科学的思考を行う場合も、それなりに大量な情報を処理する必要がある。
高回転であっても大量情報の処理に慣れてない脳は、科学的思考が不得意である。限られた情報にのみ着目して、即座に結論を出そうとする。でもそれは、トンデモに続く道である。
 
以上の通り、高回転型の脳はトンデモ系思考に流れ易く、科学的思考には向かない。
つまり、西之園萌絵は自然科学の研究者に向いてない。
 
犀川創平も頭の回転が速い。本来ならば研究者には向かないはずであるが、彼はその欠点を補うために、複数の思考をマルチタスクで行っている。つまり、犀川創平の多重人格症は、彼が科学者であるために必要な事なのである。
 

すべてがFになる (講談社文庫)

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*1:最近医者系のblogが多いが