スター・ウォーズエピソード3シスの復讐(マシュー・ストーヴァー)

映画のノベライズ版である。多くのノベライズ版は、映画のストーリを追うだけで映画の方が面白いものだが、これはなかなかの出来。
欲を言えば、もう一押しして欲しかった。後一押し、でもその一押しをするとStar Warsでは無くなってしまうのだけれど...
 

以後、ネタバレ有り

 
ジェダイは執着心を捨てなくてはならない、このため幼い頃より執着心を持たないよう教育される。故に、友情・愛情を深く持つことは許されない。また、問題に対しては、答えを「知る」ために深く瞑想する。
一方アナキンは、家族・友人・恋人に執着する。問題に対しては、「考え」て答えを求めようとする。しかし、それはシスの考え方なのである。
この小説の中でのジェダイとシスの主な違いは、執着心と思考である。どちらが善で、どちらが悪だろうか?
上記の差異は、善悪には関係しない。少なくともtemaの目には、単なる文化的差異に映る。
もっと言ってしまえば、ジェダイは禅僧であり、シスは科学者である。通常の人の考え方は、ジェダイよりシスに近い。
 
小説内におけるシス卿は、心理描写として人々の幸せを願う気持ちも若干が記述されており、本質的に邪悪な存在とは描かれていない。できれば、この方向でもう一歩押し進めて欲しかった。
シスは、文化的差異があるだけで、その心は現在の人類からさほど離れておらず、シディアスはベイダーを思いやる気持ちを持っている。シスをそのように描くことで、ダークサイドに堕ちるアナキンの心に、共感できるだろう。
Star Warsには、一般人がほとんど登場しない。このため、一般人が、共和国と帝国どちらを支持しているのかは判らない。どちらの世界が幸福かは判らないのだ。
 
優れた専制君主を頂く帝国と、汚職にまみれた政治家を持つ民主主義、一般人にとって、どちらが幸福な世界なのだろうか? そのようなストーリを読みたかった、と思う。

スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)

スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)