ダ・ヴィンチ・コード(ダン・ブラウン)

 
temaはへそ曲がりなため、話題になってる本はあまり読まない。ダ・ヴィンチ・コードも話題にならなくなったら図書館で借りよう、と思っていた。
しかしこの本、あまりにも話題になりすぎた。
あっちこっちでネタバレが乱発されている。ネタバレするのは好きだが、されるのは嫌いである。仕方なく購入し読了。
 

以下、ネタバレ注意!

誰もが認める前提を置き、
多くの人がミスを見つけられない推論を行い、
誰もが「そんなバカな」と思う結論を導く。
これが、temaの理想とする投稿である。
具体例としては、先日の「衆牛院フー」とか「北割れる」とかが*1それである。
 
ダ・ヴィンチ・コードがやってるのは、それである。
現実を事実の断片に分解し、その断片を新たな解釈で組み直し、別の現実を作り上げる。本来の現実と示された新たな現実、その落差が面白い。
今まで自分が「知っていた」はずの現実は、「信じていた」だけの真実に過ぎず、社会全体が虚構の上に成り立ってるのでは無いか、と感じるその不安感が楽しい。

ちなみにこの手法、日本では京極夏彦が良く使っている。そして別の現実を作り上げる手腕は、ダン・ブラウン以上である。つまり、全世界的なベストセラー以上の本を書いているのである。すごいぞ!ナッチー京極。
 
さて、小説としてとても面白いダ・ヴィンチ・コードであるが、不満も有る。断片化された事実を提示してから、別の現実を提示するまでの間が短かすぎるのである。
一番の大ネタは、小説の中程で披露されてしまう。そして、事実の1ピースである「ソフィが見た光景」に至っては、「別の現実」を示した後に記述されている。
別の現実を提示するならば小説の終わりに一気に提示した方が、temaの好みである。
 
ただし、小説と違い映画にはスピード感が必要である。また「事実の断片」の提示後、印象が薄れない内に「別の現実」を提示する必要がある。それを考えると、この小説は映画を指向して書かれたのかも知れない。
とまれ、別の見方考え方をすることが面白い、と皆に伝えることができたなら、それだけでも価値がある。この本を面白いと感じたなら、次には京極夏彦に、鯨統一郎に手を伸ばして欲しいと思う。
 
なお、鯨統一郎については「邪馬台国はどこですか?」と「新・世界の七不思議」だけ読んどけば、人生困らない。

狂骨の夢 (講談社ノベルス)

狂骨の夢 (講談社ノベルス)

*1:「ミスを見つけられない推論」というポイントに突っ込みは無用。我が能力不足ナリ